先日(10/13)に恵比寿で加圧トレーニングやピラティスなどを指導されている(株)rinatoの研修会に呼ばれて主に股関節内旋の尻締めスクワットを指導してきました。
(株)rinatoの代表である森さんは、私の書いた『インナー・マッスルを使った動きづくり革命パート1、パート2』を読んで、研修会をしてくださいと連絡してきてくれました。当日は森さんと男性スタッフと女性スタッフそれぞれ1名の3名が参加してくれました。
始める前に森さんと話をしましたが、加圧トレーニングやピラティスも長所と短所があるということでした。
加圧トレーニングは筋力アップにはよいのですが、脚のつけ根を縛り付けるため、股関節が詰まったような感覚になり、これだけやっていると股関節の動きが出にくくなるそうです。そこで、しっかりと股関節を動かすようなスクワットをさせているのですが、それで股関節の状態がよくなると加圧トレーニングの効果がさらに出やすくなるとのことでした。
また、ピラティスは深層筋であるインナー・マッスルを鍛えるのにはよいのですが、ほとんど脚が床に着かないオープン・キネティックの動きなので、日常生活でのカラダの使い方などの改善にはなかなかつながってこないそうです。したがって、脚を床に着けたクローズド・キネティックな動きのスクワットやランジなどでどのようにインナー・マッスルを使うかということも指導する必要があり、今回の研修をお願いしたとのことでした。
私が指導しているのは、ほとんどスポーツ選手のためフィットネスの指導者であるパーソナル・トレーナーに何をどのように伝えればよいかわからなかったのですが、こうした森さんの言葉にとりあえずいつも教えている尻締めスクワットのやり方を教えていくことにしました。
まず始めに股関節内旋の尻締めスクワットであるワイド・スタンス・ナロー・スクワットを行ってもらうと、股関節が詰まって深くしゃがみ込むことができませんでした。これは、股関節の外旋筋群が硬くなって股関節を内旋するときにそこが伸びず、大腿骨頭が前にずれてきてしまうからだということを説明し、その後、外旋筋群のストレッチを行いました。しかし、ストレッチをしてもなかなか緩まないため、外旋筋群のひとつである外閉鎖筋を押しながら動かすダイレクト・ストレッチを行いました。かなり硬くなっている森さんと男性スタッフはかなりの痛みに悶絶していましたが、ここが緩んだ状態でワイド・スタンス・ナロー・スクワットを行うと股関節が内旋してなんとかしゃがみ込むことができました。
外旋筋群が硬くなっているのは、内旋筋である小臀筋がうまく働かないからだということを解説したのち、小臀筋のコンディショニング・エクササイズを紹介しました。ところが、小臀筋になかなか力が入りません。
そこで、股関節のインナー・マッスルに力が入らないのは、呼吸で使われる体幹部のインナー・マッスルがしっかりと締まらないからという説明をした後、体幹部のインナー・マッスルを締めるアブドミナル・スクイズを解説しました。アブドミナル・スクイズを行うと体幹部のインナー・マッスルが働き、仙骨が奥に入っていくように動くことを確認してもらいました。こうした状態で再び小臀筋のエクササイズを行うと少しずつ力が入ってくるようになりました。再びワイド・スタンス・ナロー・スクワットを行ってもらうと小臀筋に力が入るようになり、かなりスムーズに深くしゃがみ込み、お尻を締めて立ち上がることができるようになりました。
森さんには、「ピラティスで学んだことを別の角度から解説してもらいながら確認できて非常におもしろかった」と言ってもらえました。私としては、誰かから教わったわけではなく、指導をしていてうまくいかないことを修正していったことを伝えたのですが、こうした評価をもらえて自分が考えたことが間違っていなかったのだということを確認できました。
4〜7月のバスケットボール塾では、パス・ドリブルを高めるための動きづくりということで、上半身の動きを中心にコンディショニング・エクササイズからハンド・ワークを行ってきました。
チェスト・パスの動きでは、肩甲骨を寄せずに離した動きで行うプッシュ・アップからワン・ボール・プッシュ・アップ、壁を押すウォール・ワン・ボール・プッシュ・アップを行い、チェスト・パスへと発展させていきました。また、ドリブルの動きでは、肘を横に開いた状態からワキを締めるように押すボール・リバース・プッシュ・アップからボールを押し下げるボール・プッシュ・ダウン、そしてプッシュ・ダウン・ドリブルへと発展させていきました。
基本的に、肘の曲げ伸ばしで腕の筋肉を使って行うのではなく、肩甲骨を離してワキを締めるように胸から肩周辺にある筋肉を働かせてパスやドリブルを行おうというのがこの期のテーマでした。
ところが、だんだん肩甲骨を離して胸で押す動きがうまくできるようになってくると強いパスや鋭いドライブでのドリブルをするためには、脚や体幹部から上半身への力の伝動が重要になってくるのです。
実は、この力の伝動を生み出すためには“仙骨を締めて押す”動きが必要なのです。一般的には“腰を入れる”といった表現がこれにあたるのですが、腰の入ったパス、つまりは仙骨で押すパスは、腕だけの動きのパスに比べ、非常に強く速いのです。また、こうしたパスは、足を踏み出してから腕を伸ばすツー・モーション(二動作)の動きでなく、足を踏み出すと同時に押すワン・モーション(一動作)の動きになるため、タイミングが早く、ディフェンスに読まれにくくなります。その上、ワン・モーションのパスでは、パスを出しながら走り出すパス&ランの動きをスムーズに行うことができるのです。
これをドライブに応用すると、腰を入れて、つまり仙骨で押してバウンズ・パスを出しながら走り出す動きになってくるのです。ボールを手で押すと、どうしても足下にドリブルを突いて一歩が広がらなかったり、ドリブルを突くタイミングが遅れてトラベリングになってしまったり、うまくドライブできません。しかし、腰を入れて、仙骨で押してパスのようにドリブルを出すと、体幹部の近くでボールを前に押して離すため、ボールを離すタイミングが早く、なおかつ一歩が広がってくるのです。
結局、5月の後半から7月にかけては、上半身だけでなくこうした仙骨で押す動きの練習をすることになりました。
みなさんも試してみてください。
先日(6月半ば)、久々に新潟に行き、高校の男子チームを指導してきました。
この高校の顧問は、以前に新潟商業高校の男子チームをインターハイで優勝に導いた佐藤先生で、私が長年お付き合いさせてもらっています。
いつものように股関節周辺のインナー・マッスルについて解説していろいろとエクササイズを行っている中、どうしてもうまくできない選手がいたため、前に引っ張り出していろいろな動きを行わせていました。その中のひとつとして股関節の内旋を行っていたのですが、どうもうまく内側にねじれないのです。
足を伸ばして床の上に座り、後ろに手を着いた状態で股関節を外側から内側に向けてねじります。このとき、大腿骨の大転子(お尻の横にある出っ張り)を触ってみると、内側にねじるときに大転子が大きく上に動いて太ももが床から浮いてしまう人が多いのです。人によって動く程度に違いがあるものの、私が指導している選手の90%以上の人が(私もそうなのですが)、このように動いてしまいます(これについては『月刊バスケットボール』の連載「未来トレーニング塾31−サイド・ステップ(1)」でも紹介しているので、動きなどがわからない場合にはこちらをご参照ください)。
ところが、佐藤先生の大転子を触って股関節を内旋してもらうと大転子がカラダの中に消えてなくなってしまうのです。佐藤先生にうまくねじれない選手の大転子を触ってもらうと、
「えっ! どうしてこんなに動くんだ? 私はそんな感じになったことがないぞ。おかしいんじゃないの?」
というのです。そこで、私が
「先生のように動く人の方がまれなんです。ほぼ9割以上の選手がこんなふうにしか動かないですよ」
と答えました。
実はこの先生は,身長が182㎝程度であったにも関わらず、バスケットボールの現役選手時代には、軽々と両手でバックダンクを決めていたほどジャンプ力がありました。私は大学1年生のときに、4年生であった佐藤先生が、210㎝の選手にセンタージャンプで勝ったのを見てビックリしたのを覚えています。いろいろとお話を聞いてみると、大学時代の走り高跳びの授業では2mを跳び、三段跳びでは15mを跳んでいたとのことでした。また、高校時代には50mを5秒6か7で走っていたというのです。
ちなみにこの他に股関節内旋で大転子がなくなるのを見たことがあるのは、プロ野球西武ライオンズの中島選手です。彼は、入団したころから知り合いに紹介されて私のところに顔を出していたのですが、やはり高校時代50mを5秒7で走っていたといっていました。
股関節を内旋したとき大転子が大きく動いてしまうは、股関節の外旋筋群が硬く伸びなくなってしまい、内旋筋である小臀筋などがうまく働かなくなってしまっているからだと考えられます。おそらく大腿骨頭がきちんと股関節の関節窩に固定されずにずれてしまっているのです。そのために、股関節周辺の筋群がきちんと大きな力を出すことができず、太ももやふくらはぎといった末端の筋肉が働いてしまうのです。
股関節の内旋がうまくできているこのふたりの選手は、太ももやふくらはぎといった末端ではなく、まさにお尻で動いているのです。
佐藤先生いわく
「太ももの前なんかあまり使った感覚がないよ。本当にお尻からハムストリングスにかけての裏側だけだよ。」
どうしたら大転子がなくなるように内旋できるのか? 今も思考錯誤が続いています。
先日(6/4,5)、東日本大震災の被害が大きかった仙台に行き、大学生の指導をしてきました。
地震の1週間前に指導に行き、それ以来だったので3カ月ぶりとなってしまいました。この大学の体育館も被害を受け、もしかしたら建て直さなくてはいけないという程だったのですが、修繕すればなんとか大丈夫になったようです。
しかし、この日は大学の体育館は、修繕中ということでまだ使えず、隣にある附属高校の体育館を借りて行いました。
この日の指導は、いつも行っているインナー・マッスルのコンディショニング・エクササイズの確認と追加エクササイズの紹介、そして5月にラグビー選手を教えたのと同様、“仙骨を締めて押す”動きについて理解してもらうことでした。
まずは、壁に寄りかかって“シーティッド・アブドミナル・スクイズ”を行いました。パートナーにお腹を押してもらい、腹直筋の状態を確認すると硬くなってかなり痛がる選手もいました。こうした選手にはできるだけお腹を引っ込めたまましばらく呼吸を繰り返してもらうと、しっかりと腹横筋が働いてきて腹直筋に力が入らなくなり、だんだんと緩んでくるのです。すると自然とへその下の奥のあたりに力が入り、仙骨が締まってくるのを確認できるようになってきます。
こうしてお腹を絞ることを確認した後に、同時に胸も膨らませずに引っ込めるように呼吸しました(アブドミナル&チェスト・スクイズ)。すると背中が膨らんできてストレッチされ、頸椎から胸椎にかけての動きが出てきて、肩も緩んでくるのです。こうした呼吸を“背式呼吸”と呼んでいます(背式呼吸について詳しくは、『季刊パーソナルトレーニング』第13号(2011年春号)を参照ください)。
アブドミナル・スクイズの後には、股関節の内旋エクササイズである“レッグ・インターナル・ローテーション&ロール・アップ”を行いました。これは股関節を内側にねじりながら、ロール・アップを行うエクササイズです。お尻の奥にある外旋筋群が硬くなっていると内旋筋である小臀筋がうまく働かず、膝が外側に開いて足が持ち上がってしまいます。そこで、外旋筋群をストレッチして小臀筋を働かせるために“ハードル・シット・アップ”というエクササイズを紹介しました。しばらくこれを行っていると小臀筋に力が入り、股関節の横前方がつりそうになってきます。こうして力が入るようになってくると、股関節を内旋してロール・アップを行っても足がしっかりと固定されるようになってきます。
こうしたエクササイズを行った後に、ラグビー選手の指導でも行ったワイド・スタンス・プッシュ・ウォーキングを行いました。これは、いわゆるお相撲さんが脇を締めて相手を押す動きをイメージしてもらえばいいでしょう。何回か行っていくと何人かの選手が、脚で押すのではなく、お腹を絞るように“仙骨を締めれば押すことができる”という感覚になってきました。そこで、
「押される方も仙骨を締めれば押されにくく踏ん張ることができるようになるよ!」
と声をかけました。するとしばらくして押される役をやっていたキャップテンが押している途中の後輩に
「俺の仙骨の勝ちだな!」
と大きな声で言っているのが聞こえてきました。なるほど、よくわかってくるとそうした感覚になってくるのです。まさに“仙骨の勝負”なのです。
5月初めの連休中、茨城県の高校ラグビー・チームの指導をしてきました。
「今日の課題は、“仙骨を締めて押す”という感覚を感じ取ること!」と言って、うつ伏せになって仙骨を触ることから始めました。
このチームを指導するのは、今年で3年目。まだまだこちらが指導しているインナー・マッスルのコンディショニングの意味が理解できず、いっしょうけんめいに取り組めないといった感じでした。今年こそ、なんとか仙骨の動きを実感させてこれがわかれば今までよりもしなやかでキレのある動きができる、プレーが変わる、どんどん可能性が広がっていくということを伝えたいと思っていました。
仙骨を押してみると、もののみごとにカチカチに硬く丸みを帯びており、後ろに出っ張ったままほとんど動かなくなっている選手が多く、いっしょうけんめいがんばっているものの力任せに動いてしまっているのだろうなぁと感じました。
力を抜いてパートナーに足を持ち上げてもらいながら腹式呼吸をするレッグ・リフティング・アブドミナル・スクイズを行った後、その状態で足を壁に立てかけるウォール・アブドミナル・スクイズを行いました。このエクササイズと壁により掛かってお腹を引っ込めたまま呼吸を行うシーティッド・アブドミナル・スクイズを交互に行うことで、仙骨周辺の多裂筋などのインナー・マッスルが緩んでリラックスした状態で背中全体が床に着いて来るのを感じてもらいました。
その後でもう一度うつ伏せで仙骨を触ってもらいました。すると、今まで硬く丸みを帯びて動かなかった仙骨に弾力性が出てきて上から押すと沈み込むようになってくるのです。「ただ呼吸をしていただけなのにこんなことでカラダが変化していく」と言って驚いていました。
そこで、次のような話をしました。
「昨年、君たちの先輩の中に椎間板ヘルニアで腰を痛め、足がしびれてしまった選手がいたけど、『毎晩繰り返しアブドミナル・スクイズを行っていたら、腰、大丈夫になりました』と言っていたよ。それぐらいきちんと呼吸すると効果があるんだよ」というとかなり関心を持ち出しました。
そこで、次に仰向けで膝を90度に曲げた状態からのアブドミナル・スクイズ・ヒップ・リフトを行いました。お腹の力を抜いてしっかりとアブドミナル・スクイズをしていくと仙骨周辺の筋肉が締まり、仙骨がお尻の中の方に押し込まれるようになってきます。この動きを“仙骨を締める”と表現しているのですが、これを使ってお尻を持ち上げる(というよりも“持ち上がってくる”といった感じ)のが、アブドミナル・スクイズ・ヒップ・リフトです。これは、呼吸をしてお腹を絞るだけで仙骨が締まり、お尻が勝手に持ち上がってくる感覚になり、力任せにブリッジをするのに比べて非常に楽にお尻を持ち上げることができるのです。この感覚がわかってくると、力任せではなく、リラックスすることの大切さがわかり、だんだんと選手たちの目が輝いてきました。
次に、仙骨を締めて体幹部を真っ直ぐに保ったままあたかも後ろに倒れていくようなシッシー・スクワットを行った後、ワイド・スタンス・プッシュ・ウォーキングを行いました。これは、前に立っている人を押しながら歩いていくエクササイズなのです。いわゆるお相撲さんが脇を締めて相手を押す動きをイメージしてもらえばいいでしょう。
実際に行わせてみると、ラグビー選手で日頃押し合いをしているにも関わらず、うまく押せない選手が多いのです。カラダが前傾してかかとを浮かせ膝を曲げて押す動きが多く、いわゆる腰が入らない動きで脚で押してしまうのです。そこで、少しスタンスを広げてかかとを地面に着けた状態でアブドミナル・スクイズ・ヒップ・リフトのようにお腹を絞って仙骨を締める動きを使って押すように指導しました。すると、仙骨がお尻の奥に入っていくような感覚が生まれ、腰の入った動きでお尻が働くようになってきました。うまくできている選手に聞いてみると、ほとんど太ももの筋肉を使った感覚はなく、とにかくお尻がきついという答えが返ってきました。まさに、“仙骨を締めて押す”という感覚がわかってきたのです。
そこで、試技に使っていた選手にこの感覚を使って走ってみるように伝えると、しばらくやっているうちに「わかった!」と叫びながら、何度も何度も繰り返し走り出しました。それまではいくら指導してもわからず、足を後ろに流して引っ掻くような動きで走っていたのですが、わかったとたんに走り出しがスッと早くなり、うしろに足が流れなくなってきたのです。そして、かかとで真下を押すようにすれば、勝手に仙骨が締まって前に進むんだということを解説すると、「だれかに後ろから仙骨を押されているみたいです」とうれしそうに話していました。それから「これは、すごい! これは、すごい!」と言いながら何度も何度も繰り返し走り込んでいました。
まさに“仙骨を締めて押す”感覚で走ることができたのです。
ここで紹介したエクササイズの多くは、拙著『動きづくり革命パート2』のセッション40〜42「尻締めスクワットを究める」で解説しています。興味のある方は、こちらをご覧になってください。
しばらく動きづくりブログをご無沙汰してしまいました。
東日本大震災の影響で3月下旬は仕事のキャンセルがあり、その分じっくりと時間をかけて『季刊パーソナルトレーニング』第13号(2011年春号)に掲載された「どうしたら肩を緩められるのか?−呼吸における胸郭の動きとインナー・マッスル」に取り組みました。
その内容を簡単に紹介してみましょう。
肩の構造を見てみると、胸郭の上に肩甲骨と鎖骨が乗っており、そこに腕がぶら下がっています。つまり、肩甲骨と鎖骨は常に腕の重さで下に引っ張られているのです。そのため、肩甲骨を挙上する僧帽筋などが常に引き伸ばされ、肩こりを引き起こし、なかなか緩みません。
また、こうした状況になると、本来肩甲骨を下に引き下げる小胸筋や前鋸筋といった肩のインナー・マッスルが伸ばされなくなって固まってきてしまいます。その上これらの筋肉は呼吸筋として働き、吸気のときに胸郭を広げる動きをしてしまいます。その結果、肩甲骨は下に下がったまま胸郭に張り付いてしまい、肩甲骨が動かない胸を張った姿勢になってしまいます。そして無意識に行っている呼吸で知らず知らずのうちにさらにその姿勢を強めてしまっているのです。したがって、ただ単に肩を動かすようなエクササイズをするだけでは肩を緩めることはできません。
こうした状態を改善するためには、まずは胸を張らずに胸郭を絞り、背中を膨らませるように呼吸し、肩甲骨を胸郭から浮かせるようにすることが必要になってきます。こうした呼吸を“背式呼吸”と呼ぶことにしました。
この背式呼吸を行って頸椎から胸椎の動きを出し、それから肩のインナー・マッスルのコンディショニング・エクササイズを行うと、なかなか緩まなかった肩のだんだんと緩んでいくようになってきます。
最後に、背式呼吸を行うためのエクササイズおよび肩のインナー・マッスルのコンディショニング・エクササイズを紹介しています。
興味のある方は『季刊パーソナルトレーニング』第13号(2011年春号)をご覧になってください。
先日2週にわたって(3/5、6および3/12、13)鳥取県のボート選手に動きづくりの講習会を行ってきました。
ボート選手を指導するのは初めてのことで、何をどう伝えたらいいのかわからなかったので、とりあえずいつものようにインナー・マッスルのコンディショニングについて話をしました。他種目の選手と同じようにやはりインナー・マッスルが硬くなってうまく動かない選手が多く、初めてインナー・マッスルを触ってその硬さや痛さにビックリしていました。
指導者の方といろいろと話をしていくと、ボート漕ぎ(ロウイング:rowing)のイメージがだんだん湧いてきました。
ロウイング(rowing)というとウェイト・トレーニングのシーティッド・ロウイングなどの上背部を鍛えるエクササイズを思い浮かべ、ついつい上半身で引くというイメージになってしまいがちです。しかし、実際のボート漕ぎのロウイング(rowing)では、上半身以上に下半身の動きが重要とのことでした。膝を引きつけて股関節をたたみ、手をオールに引っかけてぶら下がるようにしながら脚を伸ばし、そこから上半身で引き込むといった感じになるそうです。したがって、ウェイト・トレーニングでのロウイングというよりもデッド・リフトに近い動きをすることになるのです。
ただ、最近になって鳥取のコーチ陣が漕ぎ方を思い切って変えたのだそうです。それによると今までは、膝を引きつけて股関節をたたむというよりも膝をある程度曲げたら上半身を前傾してそこから引き起こすように漕いでいたそうです。いわゆるかなり上半身を前傾させたデッド・リフトのイメージです。それが、膝を十分に曲げて引きつけ股関節をしっかりとたたんで上半身を真っ直ぐに保ったまま脚を伸展することで漕ぐようにしたとのことです。これは上半身を真っ直ぐに保ったままのデッド・リフト、むしろ私がいつも推奨している“尻締めスクワット”の動きに近くなります。
そこで、講習会の最後の方では、この尻締めスクワットについて指導していきました。そのポイントは以下の2つです。
(1)お腹の力を抜いて仙骨を締め、お尻をできるだけ両足のかかとの間に落としていく。
(2)股関節を内旋して(内側にねじり)、膝を腰幅に保ってかかとを浮かせないように気をつける。
この2つの動きが同時にできたときには上半身を真っ直ぐに保ったままの“尻締めスクワット”ができるようになります。そのためには、とにかくお腹の力を抜くことが大切なのです。このスクワットは“ワイド・スタンス・ナロー・スクワット”として「未来トレーニング塾第28回ドライブ4」で紹介しています。
なかなか1回の講習ではうまくできないのですが、今回2週にわたって参加してくれた選手がいて、かなりうまく尻締めスクワットができていました。こうした選手がボートに乗ったときのどんな感じで漕いでくれるのか楽しみです。
前回、「ケガや痛みの根本原因は?」でも書いたのですが、チームの指導に行くと必ずといっていいほど、ケガや痛みで練習やトレーニングに取り組めない選手がいます。こうした選手のほとんどは、インナー・マッスルがうまく働いていないためにケガや痛みが起こっていることに気がつかず、何も対処できないまま治るのを待っています。
バスケ塾で行っている“動きづくり”は、バスケットボールがうまくなる、強くなるためにインナー・マッスルから動きを見直し、根本から動きを変えていこうということで始めたのですが、こうした選手のみなさんがケガや痛みを改善することにも役立っています。それと同時に“力強くしなやかでキレのある動き”を獲得できるのですから、まさに一石二鳥なのです。
バスケ塾に通っていたS君は、今年3月に高校を卒業し、大学に進学してバスケットボールを続けることになりました。このS君は中学2年生のときからバスケ塾に入り、インナー・マッスルからの動きづくりを続けていました。
中学生の頃はオスグットで膝が痛く、バスケ塾に来てもあまり練習ができない日もありましたが、中学を卒業する頃には膝の調子もよくなり、高校進学とともにバスケットボールの練習で忙しくなるということでバスケ塾を辞めました。
しかし、高校での練習を5ヵ月続けた後、腰と膝が痛くなってしまったため、9月から再びバスケ塾に通い始めました。毎週水曜日に高校での練習が終わった後、疲れているにもかかわらず塾に来て、インナー・マッスルのコンディショニング・エクササイズを行っていました。そうすると帰るときにはカラダが軽くなり、調子がよくなっていくのを実感していたようです。1~2ヵ月すると腰も膝も痛くなくなり、元気にプレーができるようになってきました。
S君は、中学生の頃からインナー・マッスルのコンディショニング・エクササイズが膝の痛みを改善してくれるということをなんとなくわかっていたのですが、高校生になってからのこの体験でインナー・マッスルからの動きづくりが、ケガや痛みを改善してくれるとともに、これを続けると力強くしなやかでキレのある動きを獲得できるんだということをはっきり理解したようです。その後も高校での練習が終わってからで大変にもかかわらず、3年生の夏頃まで塾に通っていました。
先日も進学する大学が決まったと挨拶に来てくれました。いっしょにバスケ塾に参加してくれましたが、しばらくブランクがあったためかだいぶカラダが硬くなっていて新しいコンディショニング・エクササイズにかなり苦労していました。大学に進学してからもインナー・マッスルのコンディショニング・エクササイズをやり続けてがんばってもらいたいものです。
バスケ塾には、今までこのようにケガや痛みを克服して元気にがんばっている選手がたくさんいます。
ケガや痛みで困っている選手のみなさん、一度バスケ塾に顔を出してみてください。初回体験入塾は無料です。バスケ塾のご案内はこちらからどうぞ。
2月の上旬に千葉県の高校女子チームの指導に行ってきました。
新人戦も終了し、この時期はどこのチームも鍛え込む時期に入っているため、練習量も強度も高くなってきています。そうすると問題になってくるのがケガや痛みです。
指導の前に7〜8人くらいの選手が私のところに寄ってきて次のように言うのです。
「すねのところを疲労骨折しました」
「膝の半月板を痛めました」
「腰椎分離症になってしまいました」
こうしたケガや痛みが起こると多くの選手が痛いから動かしてはいけないと思い込んでしまいがちです。確かに痛んだ部分をまた痛めるように動かしては悪化するばかりですが、まったく動かさずにいると余計に筋肉が固まってなかなか治らなくなってしまいます。
多くの選手を見てきた経験からこうしたケガや痛みを引き起こす根本的な原因はインナー・マッスルにあるということができます。インナー・マッスルは、無意識に働き、カラダのバランスを取ったり、姿勢を作ったりしている筋肉です。これらの筋肉は、無意識で働くがために意識的にコントロールすることが難しく、こうするためには訓練が必要になってきます。
腰、膝、足首(すねも含む)の痛みが起こるのは、ほとんどの場合、股関節のインナー・マッスルが硬くなり、大腿骨の骨頭がずれて股関節周辺の筋肉がうまく体重を支えられなくなることが原因になっていると考えられます。こうなると、太ももやふくらはぎの筋肉が強く働かざるを得なくなり、こうした筋肉が硬く、緩まなくなってしまうのです。
太ももの大腿四頭筋が硬くなると腸腰筋とともに骨盤を前傾させて腰椎を前にそらせるため、腰が痛くなってきます。また、膝のお皿(膝蓋骨)を上に引っ張り上げるため、お皿の周辺に痛みが出たり、膝関節のすき間が狭くなって半月板を挟んだりしてしまいます。
ふくらはぎやすねの周辺の筋肉が硬くなると、筋肉の付着部である脛骨(すね)の内側から筋肉がはがれるようになって骨膜が炎症を起こし、それがひどくなると疲労骨折に至るのです。
こうした痛みを改善するためには、確かに硬くなっている太ももやふくらはぎの筋肉をストレッチして緩めることが必要なのですが、根本的には股関節のインナー・マッスルを緩めてうまく働く状態にし、股関節周辺の筋肉がしっかりと力を出せるようにならなくてはなりません。そのために行っているのが、インナー・マッスルのコンディショニング・エクササイズなのです。
この日も選手たちに、ケガや痛みが出てしまうのは、コンディショニング・エクササイズが正しく行えていないからだということを伝え、もう一度しっかりと見直し、理解して取り組むように指導しました。痛いから動かさないのではなく、その根本原因になっているインナー・マッスルをしっかりと動かしてケガや痛みを改善していくのです。
インナー・マッスルをコントロールすることは確かに簡単ではないのですが、以前「自分の内部感覚の外に出る-正しい感覚を身につけるためには?」でも書いたように、常に「これでいいのか?」という疑問を持ちながら日々コンディショニング・エクササイズを意識して積み重ねると、インナー・マッスルを働かせる感覚がわかってきます。するとケガや痛みが軽減されて確実にカラダが変化していくことが実感できるでしょう。
11月より新潟県の高校女子ソフトテニス部の指導を始めました。
このチームのコーチは、一昨年の新潟国体のヘッドをしてベスト4まで導いた方で、前任校でも3年あまり我々に動きづくりの指導を依頼してくれていました。
前任校で指導を始めたときには、選手は何をやっているかまったくわからず、ただ言われるがままインナー・マッスルのエクササイズをやっているだけでした。そのため実際のテニスの動きにまったくつながらず、『インナー・マッスルを使った動きづくり革命part2』でも書いたのですが、次のようなエピソードがありました。ちょっと長くなるけど引用しておきます。
「サーブ・レシーブの動き出しの練習ということで、パートナーに近くからボールを左右にトスしてもらい、キャッチするということをやっていました。ある選手を見ていると、パートナーがフェイクして投げるふりをすると、それにひっかかって動き出してしまい、逆方向に投げられるとまったく反応できずにボールをキャッチできないのです。どうしてそんなにフェイクにひっかかるのかよくよく動きを観察してみると、軽く膝を曲げて構えた姿勢から動き出すときに膝を曲げ込んでつま先に重心を乗せてから動いているのです。つまり、大腿四頭筋を使って膝を伸ばす動きで反応しようとしているのです。(中略)
これではツー・モーション(二動作)の動きになってしまうため、反応が遅れてしまいます。反応が遅れるのでできるだけ早めに動かなくてはならず、フェイクされるとそれに反応してしまわざるを得ないのです。
素早く反応して動き出すためには、構えたときに“お尻で支え”、“お尻を締めてかかとで蹴る”ことが必要です。こうすればワン・モーション(一動作)で反応でき、相手がボールを投げてから反応しても間に合うため、フェイクにひっかかることがなくなるのです。ところが、いくらお尻を締めて動くように指導してもうまくできるようにならないのです。
その理由は、実際のサーブ・レシーブの動きを見てみると、すぐにわかりました。テニスのサーブ・レシーブでは、相手のサーブに合わせて構えた姿勢からいったん沈み込み、その反動を使って動き出します。この反動を使うこと自体は問題ないのですが、沈み込んだ瞬間にかかとを浮かせて膝を曲げ、“膝で支える”姿勢になっていたのです。当然、大腿四頭筋が強く働き、膝を伸ばす動きで反応し、動き出すことになります。いつもこのように動き出しているため、これが習慣化してしまい、先ほどのボール・トスでもこの動きを使ってしまうのです。
サーブ・レシーブでもボール・トスの反応と同じように、沈み込んだ瞬間に“お尻で支え”、“お尻を締めてかかとで蹴る”動きで反応し、動き出すことが必要になってきます。そうすれば、以前よりも余裕を持ってサーブに反応できるようになるはずです。」(p.161〜162)
こういったように始めた頃はなかなかうまくテニスの動きに結びつかなかったのですが、3年間で選手もかなりわかるようになってきました。
こうしたことを経験したこのコーチは、昨年4月から現高校に移って指導を始め、選手に動きづくりについて意識を持たせておいてくれたようです。そのため、11月に初めて指導したときにもインナー・マッスルについてもすんなり受け入れ、けっこう上手に動かせるようになっていました。
また、2回目の12月の指導では、体幹部のインナー・マッスルをうまく働かせるというかなり深い理解が要求されるところまで進んでいき、このコーチも
「仙骨から動くという感覚をぜひ身につけてほしい」
と選手に要求するくらいのレベルになってきました。
そうした成果がうまく出てきたのが、1月に行われた全国選抜大会の最終関門、北信越予選大会です。団体リーグ戦全勝で初優勝を成し遂げることができ、春の全国選抜大会への出場を決めました。優勝報告はこちらを御覧ください。
おめでとうございます!!
全国選抜大会でも優勝めざしてがんばってください。